楽器ケースを開くと懐かしい匂いがした。
なんの匂いだろう。
楽器ケース特有のあの匂いだ。
なかには“臭い”と表現する人もいるだろう。
金属とツバが時間をかけて生み出す、なんとも言えない絶妙なハーモニー。
「匂い(臭い)」と「記憶」はものすごく結びつきが深く、懐かしい匂いをかぐと、その匂いに関連した懐かしい記憶を思い出しやすい。
と、以前どこかで読んだことがある。
まさに青春フラッシュバック。
そして、ぼくはそんなハーモニー&ノスタルジーにひたる為だけに、こうしてわざわざ楽器ケースを開いたのではない。
今度、高校時代の同級生が結婚するので、結婚式の余興にみんなでサプライズ演奏しよう。
ということになり、久しくまともに吹いてなかったのも相まって、久しぶりに楽器ケースを開けるに至った訳で。
先日母校に出向いたのは紛れもなく余興の練習をするためで、卒業から10年経ってみんな変わったような、変わってないような、不思議な感慨にとらわれたまま今日(本番)を迎えたのでした。
サプライズとはいえ、呼ばれてもない結婚式に参加するという貴重な体験ができました。
みんなそれぞれに忙しく、練習は十分とも不十分ともいえない中、なんとか合わせて本番を乗り越えることに成功?
途中止まるかと思ったり、メロディーが全力疾走だったり、本番ならではのトラブルもあったけれど、こういうのも温かくていいな。
と、なんだかほっこり。
“変わらない”ことで得られる安心感もあるんだな。
と、ちょっとしんみり。
楽器ケースを開けばいつでもあの頃へ戻れる。
それはちょうど、タイムマシンみたいに。